◆[山形市]蔵王駅・コパル・九中 田植が済んで風が吹く(2022令和4年5月28日撮影)

山形市の神社は北の両所の宮、南の六椹八幡神社。
「駅はといえば、北の北山形駅、南の蔵王駅が両雄だべね」
とはいえ、山形駅と蔵王駅の間に新たな駅が出来るていうげんと、いつでぎるんだべね。

「歓迎会の会費で足出でよぅ」
「ほんで何したの」
ペダルの足をパタパタしながら聞く。
そんな会話が看板の陰から流れてきそう。
「頭隠して足が出る会話しったんだな」

蔵王駅の正面の柱は、まるで蔵王のモンスターを型どったように力強い石組み。
その隙間からちょいと出てくるのはスマホ。
長年と学生たちを見守ってきた石柱は何を思うのか。

「近ぐさある山短、あ、んねっけ。東北文教大学の要請でアイスの自販機が設置さっだんだべが」
どうもおじさんには山短が頭に染みついて、まだ東北文教大という名がしっくりこない。

「こっちのオダマキは今からが盛なんだな」
先週の天童では皆咲いでだっけがらなぁ。
斜め四十五度の傾いた光を受け止めて、ツンツンとオダマキは触手で周りの空気を撹拌している。

蔵王駅から東北文教大学へ向かう小径には小さな祠がある。
味気ない街並みに祠は一服の清涼剤のような潤いを与えている。

いづのこめが、蔵王駅前と裏を結ぶ新たなアンダーガードが出来ている。
東北文教大学が駅裏にあるせいか、それなりに人通りもあるもんだ。
「ほれにしてもあっちの出口から入り込んでくる夕方近くの光の眩しいごど」

「このガードが出来だだげで、この辺はほんてん便利になだずねぇ」
蔵王駅前のヤマザワさもすぐ行ぐいしねぇ」
自転車は太陽に押されるように坂道を滑っていく。

コンクリートのトンネルを抜けると、カモミールが出迎えてくれた。
微かな芳香が、コンクリートに囲まれて萎縮した気持ちを和らげてくれる。

この頃の駐車場は止め方が様々だ。
前向きに止めてくださいと看板があるかと思えば、
後ろ向きに止めてくださいというのもある。
待てよ。後ろ向きってのはないな、バックでって書いてあるな。
「なんで前向きは日本語で、後ろ向きは英語なんだべ?」
前向きに考えるべき?それとも後ろ向きに考える?

除草剤を撒かれたあとの雑草が西日に輝いている。
「わずかばかりの命だっけげんと楽しかったよ」とでも言っているように。

「97円なて、バガみだいに安いんねがい」
しかも兄ちゃんが何が配ったみだいだじぇ。
「ガソリンがほだい安い訳ないべ。灯油んねがよ」
それにしても値段の表示板がバカでかい。

天橋立は逆さまになってみるといいらしい。
それに倣って田植えの終わった広大に広がる山形盆地を逆さまに見てみた。
起き上がって立ち眩みがした。

「かえずが最近オープンしたばりのインクルーシブプレイス・コパルがぁ」
「インクルーシブてなんだ?」
「直訳すっど排除しないていういごどなんだど。つまり誰でも来いっていう意味っだな」
「んでも子どもだげはダメ、大人だげはダメ、体調のすぐれない人もダメ、人数も時間も制限すっどぎある」
「ましてや高齢者だげなのもっとダメっだなね」
「どごがインクルーシブなんだがさっぱり分がらねな」
俺だて、寂しいときには一人でブランコ乗りに行ってみたくなることもあるんだ。

「青空を張り付けた水田に浮かぶ、やや平べったいひょっこりひょうたん島みだいだなぁ」
「竜山の山並みさ溶け込む様に設計したのがもすんねな」

コパルを見た後にふと振り返る。
西日が雲に隠れ、まだまだか弱い苗が風に吹かれて震えている。

「田んぼの真ん中さ、あだいでっかい巨木が立ってるんだずね」
「よぐ風雪ば耐えできたもんだずねぇ」
西バイパスから南下する車たちは、気にも留めず我先にとスピードを出して走り去る。

「蒸し返すげんとよ、なにがインクルーシブや、勘弁してけろず」
「サスティナブルだのアセスメントだのコンプライアンスだのスキームだのて、
わがた振りして空疎な念仏みだいにお役所は連発すっずね」
イライラして独り言を言っていると、すぐそばの苗が声をかけてくる。
「あんまりごしゃいでばりいっど血圧上がっべな、吹く風に逆らてだめっだず」
苗は風に逆らわず水面から伸ばした体を風下に向けている。

太陽が顔を出した途端、田んぼが輝きだした。
風の強い水面には波が立ち、光はその波に触れパッと砕けて散っていく。

「俺が中学校んどぎは七中までしか無いっけ気がするんだげんとも」
「八中は西山形だべ、九中は南山形と長谷堂の混成チームっだなね」
公衆電話の脇でしばらく山形市の中学校の事をぼんやり考えてしまった。

「どごがで見だ光景だずねぇ、あ、んだ!庄内さある有名なきのこ杉の参道だ」
「こだい立派な参道がある中学校て珍しぐないが?」
「しかもヘンテコな(失礼)オブジェまで出迎えでけっじぇ」

「コパルの流線形さ、皆見どれっげんと、あたしだの方が早いんだがらね」
誰が言っているのかは分からないが、西日を正面に浴びたどれかの顔がそう言っている。

「人差し指の突き指ば題材にしたんだべ?」
「中学生の頃はよぐ突き指したもんだ」
ある意味突き指は中学生の枕詞かもしれない。

「勉強と部活のどちらに重きを置くか天秤にかげる格好だが?」
「田んぼの真ん中だがら案山子なんだが?」
九中への通路に立つモニュメントは、背後から夕陽を浴び自信に満ちて立っている。

みはらしの丘へ向かう西バイパスの交差点。
クッションの歪みを見れば、どれだけ車たちが暴挙を働いているかがわかる。
「見世物んね、信号青だがら早ぐ歩道ば渡れ」

白鷹方面から強い風にちぎられた雲が山形盆地へ流れ込んでくる。
コパルの屋根は山並みに溶け込んで一体化している。

本沢方面へ向かう電線は、引っかかった光を捕らえ発光する。

再び蔵王駅へ戻ろうと、アンダーパスをとぼとぼ歩む。
振り向くと山の背後へ隠れる前に、
太陽は今日一番のエールを送ってくれているようだ。

雑草だって生きたいし、生きるなら伸びてみたい。
絡み合いながら競い合いながら風の中へ分け入っていく。

「なして若いのに落ぢでしまたの?」
「風が強くてよぅ」
一言いってから葉っぱは水たまりに体を横たえ無口になり、
雲の流れをただ見つめている。

真横からの光に目を開けているのが辛い。
アヤメは一日強風に煽られてさぞくたびれていることだろう。

「こだい陽が傾いだら、あど帰るしかないべなぁ」
「ほだごどやねであたしば撮ってけねが?この美しい姿ば」
自分の旬を知り、やがて萎れることも分かっているアヤメは、
なんとか旬の姿を残しておきたかったのだろう。
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