◆[山形市]庄内浜魚まつりin山形 北風と太陽(2019令和元年11月17日撮影)

完成してしまった県民会館。
テルサが陰に隠れてモソモソ言っている。
それはさておき、これから県民にどんな夢や感動を与えてくれるのか楽しみ。

「なんだがなぁ」
「垢ぬげねていうが」
「アンバランスていうが」
「不格好んねが?」
その不格好に見慣れて、やがて親しみが湧き、
そして県民に愛されるようになる。と、霞城セントラルの上から目線。

初冬の日差しは痛いほどに強い。
針が混じったような風が、枝を越して吹き付けてくる。

自転車の脇でかがんでみる。
篭には落ち葉が溜まり、その向こうでは首をすくめた人々がスクランブル交差点を渡る。

どこから舞い込んできたのか、篭には落ち葉。
否、落ちなかったのだから落ちそこないの葉っぱというべきか。
篭の格子模様を体に張り付けて、仰向けになる。

初冬の日は空を低空飛行する。
よって、影は地べたに納豆餅のようにビローンと伸びる。

県民会館のオープンを知らせるチラシが風で強烈に煽られる。
鉄棒にしがみつきながら、真っ赤になって寒さに耐える。

オブジェがシナを作るように腰をくねらせる。
硬い金属でもシナを作らなければならない事情があるのか?

いずれ撤去されるだろう工事中の看板。
人知れず、また違った現場で立ち続けるんだべな。

今日の強風でどれだけの葉っぱが枝を離れていったことだろう。
来年に新たな葉が芽吹くころには、奥に見える県民会館はきっと県民で賑わっていることだろう。

水面は落ち着かず、常に波を立てている。
雲は速度を速めて千切れながら空を飛び去る。
散乱する光の一つ一つが鋭利な刃物のように肌をかすめる。

「山形でこっだな見るいなて、凄いずねぇ」
影を伸ばした人々に囲まれて、庄内からやってきたサクラマス。

催し物に各種コードは必携。
風に乗って落ち葉がコードにまとわりつく初冬のイベント。

映画看板の隙間からも寒風が突き抜けてくる。
その風には山形人の食欲も少なからず混じっている。

霞城セントラルの円柱は冷たくそそり立つ。
その脇で円を描き続ける県魚サクラマス。
そっと遠くから眺めている県民会館。

霞城セントラルが描く幾何学模様の隅を子供が走っていく。
ラビリンスに紛れ込んだ勇者のように?

アトリウムはクリスマス色一色。
いや、集まっている人々はクリスマスより、庄内の旨いものに目が釘付け。

「んまいごどなぁ」
箸も止まらず、会話も止まらない山形内陸人は、
庄内を賛美することに余念がない。

「山形では金魚釣りが定番だべ」
「庄内ではヒトデ釣りが定番なんだど」
「ほんてんか?」

サンタクロースはその大きな愛で、
アトリウムのみんなを包み込もうとしている。
「誰がこっち振り向いてぇ」

「クリスマスと庄内のんまいもののどっちいい?」
「海産物たっぷりのケーキ」
どっちも旨いが、一緒じゃ困ると、サンタが苦笑い。

「芋煮の中でまでスマホずぁないべぇ」
「んだて山形県民だがらて、芋煮もスマホも手放さんないものぉ」

「脳みそがカニ味噌だったらなぁ」
「その発想は脳のどの部分が考えだんだ?」
「いいがら、早ぐポーズとれ」

「おれだて撮影ばりんねくて、んまいものの買い物もしてみっだい」
おっと、二階から涎が商品へ垂れるところだった。

「どだい早ぐエビば剥ぐいが競争だど」
「それにしても皆一心不乱なんだげんと」
「んだて剥いだエビば、そのままエビ丼にして食いんだもの」

「ブルーのゴム手袋が蝋人形みだいだどれ」
「ほだなごど構てらんね。剥いだぶんだげ食いんだがらて」
おじさんの視線はエビを刺すように一直線。

「凄いべぇ」
「なんだず、ほだい見せずらがしてぇ」
「褒めれば褒めるほど伸びるタイプだな」

「みんな間もなくクリスマスだて忘っでいねが?」
「明日のクリスマスより、目の前のヒトデだべ」
アトリウムのツリーを見上げるにはまだ早い?

「獲ったどーッ」
大きな声で叫びたかったけれど、
恥ずかしくて、唇だけそっと動かした。

こっちをジーっと覗き込んでいるけれど、
こっちもジーっとそっちば見でいるんだがらね。

「獲れるもんなら獲ってみろ」
魚は手のひらをせせら笑う。
だから私は包み込むように撮ってみた。

寒風は相変わらず治まらない。
水面には波が幾重にも重なっている。
それでも庄内の旨いものに向かって人々が集まってくる。

「風強すぎで大丈夫だべが」
「んだずね、危なくてテント畳まんなねべが」
男は背中で物事を語るもの。
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