◆[山形市]東志戸田 雲は湧き風吹き渡る(2019令和元年6月3日撮影)

金井方面から志戸田へ入り込めば、このどっしりとした建物が迎えてくれる。
おそらくこの辺りが志戸田銀座だったのだろう。
車社会になる前の人々の生活を想起させる光景。

「おまえ最近綺麗になたんねが?」
若干の嫉妬心を含ませて「ゆうパック」が「塩」へ聞く。
ポストは黙って聞き耳を立てるだけ。

走り去る車を睨んでいるのか、見守っているのか。
自販機だって、ただ喉を潤すためだけに立っている訳じゃない。

背景の板塀が、益々花びらの色を際立たせている。
「ほんでいいのよ」と、板塀は満足げ。

空へパッと掌を広げ、太陽のありがたみを全身で表現する。

ドラム缶の蓋には灼熱の世界が広がっている。
もしかしたら目玉焼きが出来るくらいに。
なのに葉っぱは無造作に疑いもせず寄り添ってくる。

「オレの方が太陽さ近い!」
「ほだごどない。オレだて近い!」
背比べは生物の宿命か。

「土好ぎだま。土も触らね生活なて考えらんね」
腰をかがめた背中には、太陽がジリジリと照りつける。

「かぼちゃだどばっかり思たっけ」
「んねのが?んだらなにや?」
「ズッキーニ?」
農業をしていないと分からないことばかり。

騒がしく踊り続ける葱坊主。
なにがそんなに楽しいのか。

大きく開いた葉っぱにはテラテラと光が張り付いている。
溺れそうになりながら、睡蓮は水面に花開く。

村の道沿いは花だらけ。
暑くさえなければ、山形の村中散歩コースに最適の季節。

「苦しいずぅ」
トタンは暑さと紐に縛られた窮屈さで呻きを漏らす。
ピーンと伸びた紐の影はトタンの上で波打ち、
トタンの体をこちょばしている。

コロコロ、コロコロ転がって、アスファルトを渡ろうとする梅の実。
向こうの花たちは、車に踏みつけられないか気を揉んでいる。

「おまえ、そろそろ咲く気でいんのがぁ」
タチアオイがスイッと伸びた姿を見て冷たく声を掛ける。
「んだて、タチアオイの咲き方さ上品さば感じらんないんだも」
※あくまでも個人的感想です。

抜け落ちた蓋。
遠巻きに緑が様子を伺っている。

山形盆地の中心には、何も遮るものがない。
おかげで直射日光と水田の水の反射で、あっという間に日焼けしたのはいうまでもない。

「ただの雑草だげんとよ、オラだは簡単には負げね」
綿毛を風に飛ばし、人間から一生雑草と言われ続けながらもしぶとく生きる。

♪雲は湧き、光溢れてぇ。
雲の上には苗育つぅ♪
※逆さまに撮ったら面白い世界が広がりました。

「おら落ぢるはぁ」
「落ぢでも怪我なのすねがらぁ」
用済みの灯油缶はコンポスターに危うく乗せられて気が気ではない。

「うっ、目がくらむぅ」
軽トラ荷台の銀色シートがギラッと目を剥いて睨んでくる。

田植機は力仕事を終え休憩中。
シロツメクサたちは踏みつけにされても、その体を労るように見守っている。

「雑草の力ば侮んなよぅ」
熱気をはらんだタイヤの中から這い出して、その生命力を見せつける。

さっき見たのはズッキーニ。
今目の前にあるのはカボチャ。
咲こうとする花の下にはちっちゃな玉コロ。
これがあのでっかいカボチャになるんだずねぇ。

エイリアンの嘴が四つに分かれて開きつつあるようだ。
夏の光を感じ、カボチャは今からぐんぐん存在感を増していく。

道端まではみ出して花開く。
今を盛りと咲く花たちには好奇心が一杯詰まっている。

「なにつんのめってんのや?」
「これがオレの正常な立ち方だがら」
一輪車は土に唇を付けながらピクリともしない。

「こごらげだどれはぁ」
ボロボロのシートが絡みつき、雑草もスポークに絡みつき始める初夏。

踏んづけてしまいそうな地面すれすれにも花は咲く。
「アスファルトの脇で、よぐ暑ぐないもんだなぁ」

誰もいない児童遊園地。
滑り台は季節の花たちに声援を送られながら子供達を待っている。

ニッと笑いながら陽を浴びる。
「バネがウズウズしてっからよぅ。早ぐ子供だ来てけねがなぁ」
周りを見渡しても、子供はおろか、年寄りでさえ歩く姿はまったく見えない。
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