◆[山形市]本町・木の実町 春の手始め(2018平成30年3月24日撮影)

大通りから一本裏道に入ったら、さくら木公園。
もちろん人っ子一人いない。
NHKの電波塔に引っかかった春風は、その後子供のいない公園を誰にも邪魔されずゆったりと流れている。

教会は街中にひっそりと佇んでいる。
その背後では十字屋の看板が途方に暮れたまま、春風に身を任せている。

ベンチがのの字を書いている。
そうか、ベンチは女性だったんだ。
だって、のの字を書くの意味は、若い女性が恥ずかしがったり、すねたりするときのしぐさらしいから。

冬の間に羽を広げたまま固まってしまった鳥が春風を感じはじめ、
もうちょっとで飛び立つかも知れない。
「ほだなごどあるわげないべ。ただのオブジェだどれ。」
「ほいな現実的なごどばりゆうがら、山形の街並みがさっぱりおもしゃぐなぐなるんだず。」

道ばたにどっしり構えたおしどりは、
もしかしたら将来おしどりになるかも知れない高校生の二人連れを、
行き交う車の隙間からしっかりと見つめている。

モンテ命!本当に命を捧げるくらいのサポーターが存在するようになった。
もちろん車体の色もブルー。わざわざブルーの車を買うという熱烈サポーターを私は知っている。

「こだなどごで両腕ばひん曲げで、筋肉美ば見せでんのが?」
「冬の間に体が鈍ってしまたがらよぅ。」
ナルシストな排気パイプは、私の目の前で一際腕に力を入れて踏ん張った。

「仕事始まる前の一服っだなぁ。」
「一服30分ごとに100円だじぇ。」
「心配すんなぁ。24時間ずーっと一服しても500円なんだがらぁ。」
仕事はいつするんだろう?

栄町通りは南進一方通行。
北から走り来る車が、通り沿いの看板や暖簾に冬中北風を吹き付けて走り去る。

「禁止の禁の字が変だずねぇ」
「おそらぐ途中まで書いて、ど忘れして適当にごまかしたんだべな。」
「春風のいだずらだがもすんねし。」

ビルの非常梯子?に一冬中絡まっていたのは、カラスウリだった。
ぱんぱんに膨らんだ体を重そうに垂らして昼の星座を創っている。

車を利用する者にとっては、この地点までしか道路拡幅されていないのがもどかしい。
駅前通りと交差する地点まで拡幅されないと、効果は見込めない。
でも、古き昭和を感じていたい者からすれば、ここが最後の牙城という気がしないでもない。

済生館があっから花屋さんがあるんだが、たまたま花屋さんの近くに済生館があるんだが分がらねげんと、
あまりに黄色が際立って目を刺激するものだから、青空と黄色がくっつくように一生懸命屈んで撮った。

太陽が雲の中に一瞬隠れてしまった。
路地に入り込んでいた光が突然ひゅっと消えて、路地の華やかさは力なく萎んでしまう。

「テトリスか!?」
どこかの発泡スチロールを抜き取れば、あっという間に積み重ねられた植木が崩れてしまいそう。

春になって磨かれた車の隙間から、
年月に磨かれた建物が、春の日を浴びて穏やかな姿を見せている。

「ずげ完成すっべよ。」
「工事現場なのマスクすねでいらんねっだず。」
マスクといえば、花粉症のピークは過ぎたのか?

黄色いチューリップは人の目を釘付けにするのに、
黄色いビニール旗は見向きもされない。

「ありゃりゃあ!七日町通りは北進一方通行なのにぃ!白い車同士がぶつかっどれはぁ!」
宝石店壁面のガラスは常に左右対称のいたずらを密かに行っている。

七日町通りの南から北までずーっとモンテブルーの青空が広がっている。

一小の方から七日町通りに向かい、グランドホテル側に曲がればいきなりの不意打ちが待っている。
「通りば歩く人は皆気になてっげんと、山形人はすぐワニッから、しゃね振りすんのよねぇ。」

「むつっとして歩く山形人の前で、おどげでんのも恥ずかしいべぇ。」
選手の笑顔に呼応するように、山形人も笑顔で歩ぐべ。春なんだし。

「出でこい、ほだんどごさおつこまていねでよぅ。」
「オラだはこごが好ぎなの、居心地が良いの。」
ビルの隙間の陽も当たらない場所が好きな者たちもいるんだずねぇ。

「ちゃんと蓋して、荷札貼ってけらっしゃい。」
宅急便が急いて促す。
「オラだはこごさずーっといで売らっでいぐの。」
かぶの葉は日を浴びながら、のんびりと空を見る。

歩道にぽつんと置かれたバイクのメーターを覗いてみた。
車体は春の光で暖まっている。
と、思った矢先、山交バスが私の少ない毛をかき乱してすぐ脇を走り去った。

「青空とオブジェだげ見っど、どごだが分がんねべ?」
「荘内銀行の行員さんも分がんねなてゆたら駄目だのー。」
あー、待ってだのー、この暖かい空気と青空。

背中に背負っているのは春の日差しでした。
大多数の山形人が背中にプレッシャーやストレスを背負っている中、
春の日差しと薪をを背負っているのは、幸せなんだがもすんねな。

一小と歩道の境目は、なんだが前のめりに傾いていないか?
恐らく背中を陽光が押しているからに違いない。

「緊張しったんねが?」
「それとも蔵ば背景に立ってんのが不服なんだが?」
「はたまた、花も咲く前に撮らっで、おもしゃぐないのが?」
ところで、その子誰の子?

「背中があたかいずね。」
「うん、あたかいし、この子が重だい。」
「俺が抱ぐが?」
「しぇえ、あたしが抱っこしてる。」
日差しのぬくもりを背中にため込みながら、
二人の会話がぽろぽろと光に混じってこぼれ落ちてくる。

「いい案配だぁ、こだえらんねぇ。」
自転車の篭から快感の声が漏れてくる。
よーく見れば、洗濯ばさみで挟まれたモモヒキが仰向けで日光浴をしているじゃないか。
「はえずぁ、こだえらんねべなぁ。」

一小の子供たちの歓声は、桜の蕾が膨らむのをいやが上にも早めている。

「ニラんねがら、水仙だがら。」
「ところでこごどごだが分がっか?」
「分がんねごんたら、一小卒なてゆてらんねっだな。」

貴親方がめくれて、そっくらがえっている。
きっと春風のいたずらに違いない。

ガチガチに固められたバイクのハンドル。
「そろそろ外したらなんた?ミラーさ青空が写ったじぇ。」
風で無理無理外すのは不可能だと、太陽は柔らかい光でハンドルを暖める。
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