◆[山形市]山寺駅舎とこけし雪だるまコンテスト(2018平成30年2月11日撮影)

山寺駅のホームに降り立ち、階段を降りる。
古びた配線の軋みが聞こえそうなほど、静寂が通路を包んでいる。

いまや大半の地方の駅は小さい無人駅だ。
それに比べればなんと風格がある立派な駅なんだろう、山寺駅は。
さすが東北の駅百選に選ばれる訳だ。

カツカツと響く自分の足音を耳に捕らえる。
出口が少しずつ目の前に迫ってくる。

無味乾燥な通路とは違う風情が、目に体に心地良い。

「奥の院までは歩いて2時間かかります。」
「トイレまでは這ってでも1分で行けます。」

いきなり目の前に迫ってきたのは山寺の山並みではなく、
雨粒の波紋だった。

真冬の雨のせいで、雪は気持ちまで緩み、
今にも地面へ落ちる体勢だ。

「離れろずぅ!」
フェンスは叫ぶ。
「やんだやんだぁ、せっかく仲良しになたんだどれぇ!」
雪は雨に濡れながら、引きはがされるのを拒むようにフェンスにしがみつく。

風格をたたえた端正な光景も山寺の自慢だ。

今や街行く人々の大半は中国語で話している。
山寺の光景は変わらないけれど、訪れる人々は大きく変わった。

うらぶれ感が好きな人は、心の緊張を解かす光景。
近代的で清潔な街並みだと、気を張っていなければならないからねぇ。

「落雪に注意してください」と喚呼しながら雨に濡れる案内。
喚呼の声は少しずつか細くなっていくようだ。

「おまえは雪だるまコンテストの案内しったのんねのが?」
「ほだなしゃねっすぅ」
坊主は笑顔のまま答える。
どうやら主催者との連携がうまくいっていないようだな。

「生首晒してなにしったの?」
「?ここが雪だるまコンテストの会場だっけのがぁ。ゴメンな生首くん」
「んだがら生首て言うなず。」
アンパンマンもバイキンマンも、無理して笑顔を作りながら失礼なおじさんに文句を言う。

雨降りなものだから、ドラえもんは泣き顔になりつつある。

そこに鍋があれば蓋を開けてみたくなるもの。
その気持ちをグッと押さえるのは大変だ。
たとえ周りに人が居なくても。

ゴミ袋はここが山形市だと主張し、ポットや鍋は所在なさげに俯いている。
紅白幕も元気がない。

一生懸命働いた後のスコップに汗が滴っている。
その赤いスコップには二人のコビトが挟まれている。
そんなつもりは無かったが、偶然写った産物だっす。

真冬の雨は、パンダの顔面を打ち、山寺の山並みから雪景色を剥いでゆく。

「溶げねうぢに早ぐ見でけろなぁ」
雪像立ちは切実だ。

「傘の雪像が?」
「分がてっくせにぃ」
「ほだな訳ないもねぇ」
コンテスト審査対象外の傘は、少しだけ悔しそう。

「傘なの差して審査なて初めてだがもすんね。」
「審査票さ書ぐのも大変だず。傘ば持ちながらだど」

「ワンコ、喜んでワンて吠えっだりゃ」
「うそだぁ、溶げんのやんだくて青息吐息なんだじぇ」
冬の雨は雪像には辛すぎる。

「なえだて今年は雨に祟られでねはぁ」
「んでも16回も続いだんだがら大したもんだったなぁ」
数年で無くなるイベントが多い中、継続は力なりを具現化している催しはすばらしい。

仙台からあえぎあえぎ雪をかき分けて走ってきた電車が山寺駅へ滑り込もうとしている。
何事かと窓の外を見ている乗客もいるようだ。

「こだんどごさ立って、何がめでたい。」
重たい雨を含んだ雪を運んだ後だけに、紅白幕を見てスコップたちはイラだっているようだ。

「早ぐあべ。もしかして造た雪像が賞とっかもすんねば」

表彰式が近づき、会場にはワンワンと人々が集まってきた。
心なしか太陽も少しばかり顔を出し、辺りの雪を立体的に見せている。

山寺はしゃねこめに国際的な観光地になった。
様々な国の人々が訪れては芭蕉の残り香を味わっていく。

「なえだてたまげだぁ。最優秀賞だじぇ。」
思わず笑顔が弾けるのも頷ける。
んだて、賞品は凄いし、賞金もびっくりするほど凄い。

「穴蔵の中さなにがある。」
「日本酒だどれ。今日だげは飲んでいいんだべが?」
子供は躊躇しながらも酒瓶から目を逸らす。

「ふぅ、くたびっだぁ。ああこわいこわい。」
「おらだスコップさも何が賞けでもいいべずねぇ。」
「おまえださける賞は休息だぁ。」
スコップの汗は急速に冷えてくる。

「まった。たんま。ずるすけぇ。」
思いの丈を叫ぶが容赦なく雪玉がぶつけられる。
これで雪国の子供は鍛えられるんだ。

「かえずが最高賞なんだど、一緒に撮ってけっからな。」
「頑張てシャンシャンみだいにめんごぐなれよぅ」
「めんごいのはもうなてっから、後はシャンシャンみだいに人気者になるぅ。」
山寺のシャンシャンは何時間でも無料で見放題。
TOP