◆[山形市]植木市・薬師祭り ひとときの異世界(2017平成29年5月9日撮影)

植木市を堪能するなら、夕闇の迫ってからがいい。
異空間へ入り込むような楽しみがある。

薄闇の中に電球の光が浮かび、非日常の空間が広がっている。

仕事を終えてホッと一息の精神状態で、そぞろ歩きながら様々な植木を眺めるのは至高のひととき。

お祭りには欠かせないキャラクターのお面。
明かりに照らされながらお祭り独特の雰囲気を醸している。

こういうのは風船とはいわないのか?
夜風にブルンブルンと体を揺らして人々を誘う。

びっしり埋め尽くされた昭和の雰囲気。

JK(女子高校生)たちがピカピカ光る飲み物を手にしていたので、
つい興味がわき、勇気を出して声を掛けてみた。
JKたちもお祭りの高揚感があるのか、すんなりと親爺の声に耳を傾けてくれた。

「光る飲み物ば動がして、何か形を作ってけろ」と願う。
女子高校生たちはしばらく考えた結果、ハートの形を作ってくれた。
シャッタースピードを遅くするとこんなお遊びの写真が撮れる。
でも、女子高生たちの顔はヘンテコになってしまった。ゴメン。

すれ違うこともままならないほどの通りでシャッタースピードをゆっくりにして撮影する。
薬師の杜が闇の中に浮かび上がり、明くる人々のシューズだけがちょっぴり映っている。

薬師祭り最大の異空間が闇の中で異彩を放っている。
山形の子供たちは、年に一回のこの濃密な時間を共有して育ってきた。

高校生に占拠されたかに見える薬師の杜。
具体的な目的があるでもなく、ただなんとなくこの異空間でいつまでも喋っていたいのだろう。

醸し出す雰囲気だけで、心があらぬ方向へ誘われてしまう。
ゴチャゴチャ感、様々な食べ物の匂い、人々のざわめき、それらを包む闇が渾然一体となって人々を別世界へ連れて行く。

定番は一番目立つ位置で、香しい匂いを放っている。

みんな何故か浮ついた気持ちになってしまって、何をするでもなく森の中か立ち去りがたい。

ずらっと並んだセーラー服姿。
制服のままで夜まで遊べる薬師祭りは、山形の高校生にとってありがたい。

本堂脇の暗がりで静かに佇む。
まさに喧噪と静寂が入り乱れる薬師祭り。

乾燥注意報がでていても、境内内だけはねっとりとした大気が闇と一緒になって
枝葉や人々にまとわりついている。

お参りする人々は引きも切らない。
初夏となり軽装になった人々は、闇に浮かぶ光のようにフワフワした気分で、
夜の呼気を無意識に感じている。

ハナミズキの下で世間話に花を咲かせている二人。
この異空間がそうさせるのか、会話のオクターブがいつもより高い。

山形人の心のふるさとといっても過言じゃないと、
一向に減らない人々の列を見て思う。

ざわめきと明かりの中で頬張る旨さ。
やはり食べ物の味は周りの雰囲気に大きく左右されるようだ。

山形人を魅了してやまない薬師祭りと植木市。
通りの人々は誘蛾灯に群がる蛾のように、それぞれの好みの露店へ吸い込まれていく。

祭りの余韻を噛みしめつつ、市営グランド方面へ歩みを進める。
背後の薬師様の祭りの明かりを思うと後ろ髪を引かれる思い。

月も朧に霞んで見える。
祭りのざわめきだけは枝葉を抜けて流れ込んでくる。

のどが渇いた。
蛇口は冷たい光を放つ。
そのヒンヤリした蛇口をちょっとひねっただけなのに勢いよく水をほとばしらせた。

河川敷の仮設駐車場には、まだまだ車が数珠つなぎで列を作っている。
すでに千歳山も竜山も闇の中に隠れているというのに。

隣の市営グランドと薬師祭り・植木市が相まって、薬師町は不夜城と化した。

馬見ヶ崎をまたぐ歩道橋の上で風に吹かれてみた。
やはり五月上旬の空気はヒンヤリしていた。そして浮ついていた心をクールダウンさせてくれた。
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