◆[山形市]諏訪町・小姓町・十日町 早春に陽が差せば(2017平成29年3月18日撮影)

伐られた大木の年輪に樹脂?が塗られていた。
よくよく見れば、この内側の年輪は50年目、この外側の年輪は150目などと表示あり。

諏訪神社の太鼓橋。
まだまだ春の大気は希薄だが、樹皮の内側では突貫工事で花を咲かせる準備をしていることだろう。

モンテディオはここで必勝祈願した。
諏訪神社って勝利の神様なんだろうか?

ほわほわの産毛が、寒さから守るように膨らんだ芽を大切に覆っている。

子供たちはみんな健やかに育ちますように。
そして我々の年金分を稼いでくれますように。

「テロテロに磨がっでずねぇ」
「対向車さ、あっかんべぇして走んのが?」

「あれ?こごらへんさ成願寺あんのんねっけがぁ?」
何が建つかわからないが、山形らしい品位のある建物を望む。

「ペターっとくっついでんのやんだぐなたんだべ」
「んだずぁ、なんぼ暑いったて寒いったて、じーっとしてるて辛いじぇえ」

街がきれいなことに異論はないが、きれいを越えて殺風景になっちゃいけない。
そこそこの生活感があってこそ、街は居心地がいいんだべ。

キロキロにさび色が光っている。
ちぎれるものかと必死に歯を食いしばるチェーン。

境内脇に読み終えた新聞や漫画が整然と並ぶ。
境内という場所をわきまえているからこそ、きちんとした格好で緊張しているのだろう。

「おまえから起ぎろ」
「おまえこそ早ぐ起ぎろ」
お互いを牽制しながら、植木鉢は春眠をむさぼっている。

平成の新車に昭和の街並みが映り込む。

「骨折したのがぁ?」
雪かきはポッキリと折れた体を日差しに晒している。
「年しょてがら骨なの折れっど、歩がんねぐなっから気ぃ付けらんなねっだな」
「おらぁ、あど捨てられるだげだはぁ」
雪かきは涙目で空を見る。

「勝手に止めんのいねがぁ」
ゴミ箱からペットボトルの目玉がきょろきょろと見張っている。

ほんとの昭和を味わいたくなったらここに来る。
故意にわざとらしく観光客用に創られた疑似昭和の建物はあちこちにあるけれど、
本物の昭和の街並みは残り少ない。
その残り少ない本物の昭和の街並みがここにある。

「おらぁ、こいな雰囲気大好きだぁ」
この前で、棒っきれを持った子供が走り回っていたり、おばちゃんたちが立ち話をしていたり、
縁台でおじいちゃんが将棋でも指していたらもう何も言うことはない。
ああ、昭和は勢いよく遠ざかっている。

山形ほどステッカーを貼っている車が多い県は少ないと思うけど、
これほど熱狂的に貼っている車は少ない。
そういう私はフロントガラスに小さなフラッグを付けている。

車の入り込めない路地に春の光が穏やかに入り込んでいる。

サドルの破れ目からスポンジが顔を出す。
春を感じたからなのか、けっつの重みに耐えかねたのか。

「こだいカチャカチャなるまで、よぐ咲いっだごどぉ」
水分を失った花びらは、春の日差しをため込んで最後の輝きを放っている。

私がプラプラ散歩しているあいだにも、働く人はせわしなく働いている。
ゴミ袋には春の日差しが入り込み、臭いとともに膨らんでいる。

「いづまで食てるんだべねぇ。早ぐ空がねがなぁ」
仕事の緊張を解き、食堂前で世間話をしながら待つひととき。

「オレは歩く、遠くまで歩く。走る、勢いよく走る」
「すべては主次第だげんともね」
吊されたジーンズは体をリセットしながら遠くを見つめる。

壁に向かってほぼ水平に光がなでるものだから、
壁のザラザラの一つ一つがヤスリのように際立っている。
思わず手のひらでそっと撫でてみたくなる。

これでもかといわんばかりに、ポスターやパンフ・幟・立て札が紅の蔵をアピールする。
このあざとさも山形の観光拠点だから仕方ないのか。

屋根の鋭角をなだめるように寒梅が柔らかく微笑んでいる。

「あんたが主役」
箒とバケツがいう。
「悪れんだげんと今だけは主役でいいべ」
寒梅が申し訳なさそうに、でも晴れやかに咲き誇る。

「なんだが、くらすけでけっだぐなっずね。その頭」
「ほだい私ば嫌いなのが?」
「んねず、めんご過ぎっからよぅ」
瞬きもせずゆるキャラは笑顔を振りまく。
TOP