◆[山形市]本町 それ見たことかと雪が降る(2017平成29114日撮影

「今年は雪なの降らねんだべなぁて思ったっけ」
「んだずねぇ。急に来たまねぇ」
「雪なの、それみたことかなて思て、ほくそ笑んでだべ」
フェンスの看板たちは自分たちの責務を忘れて、世間話に精を出す。

今まで全く気にすることも無かった電線が、やたらと多く見えるのは電線の雪太りのせいかも知れない。

正調山形市の街並み。
この間までの雪の無い街並みは、山形市にとって正調じゃなかった。

済生館の病室から外を眺めている人に、この雪景色はどう映るのだろう。

「ったぐ、クール宅急便の中のほうが暖かいずぁ」と、配達の方が言ったかどうかは定かでは無いが、
中も外もさほど温度の違いはないと思われる。

「見えねぇ〜」
案内版が顔を白くしてぼやいている。

「どだい寒いったて、んまいものはんまいのっだず」
雪の舞い散る中で、冷やしらーめんの文字が力強い。

「んご〜、んが〜」
「みな、口ふさがっで、なにゆてっか分がらね」
真綿で首を絞めるって怖い表現もあるけれど、こっちは綿のような雪で口をふさがれるだ。

「吹雪の中でもきちんと渡ろうていう意味の標識だが?」

がっちりと建つ市島銃砲店には、ちょっとした事ではびくともしないしっかり感がある。

「車はいいっだず。雪下ろししてもらえっから」
どうやら石碑らしきものが、車の雪下ろしをいじけながら見ているらしい。

「なんにも言うごどない。んだて山形ではあまりにも当たり前過ぎる光景だべしたや〜」

門の下で上着の雪を払いながら、明善寺の一風変わった造形美を眺める。

「用ないのはあっちゃいげ」と言わんばかりに、
落ち損ねた銀杏のギンナンがプルプルと震えている。

雑多に並んだ自転車たちは、自己主張しようにも、その姿を覆われてしまった。

「なして上さ被さてけんの?」
植木鉢たちが凍えながらいう。
「おまえだがめんごいがらっだな」
スノーダンプは雪かきで疲れているはずなのに、植木鉢へ寄り添って立つ。

「あどやんだはぁ〜、だらーーーん。」
ついに張り詰めていた緊張の糸が切れ、雪の重みに身を任せてしまう。

「ほだんどごさいっど、吹飛ばされっべな」
めんごい綿帽子をかぶった花の蕾は、舞い散る雪のなかへ踊りだそうとしている。

「もうちょっと頑丈に作てけっどいいんだっけげんと・・・」
看板は、自らが雪で押しつぶされてしまうのではないかと心配する。

埋もれた者同士、何を喋ったらいいか、どう声を掛けたらいいか分からないでいる。

「もしかして二宮尊徳さんだが?」
「ちぇっと声かげねでけね。本読んでいるんだがら」
「うそこげぇ、んだて本なの雪かぶさてさっぱり見えねどら」

一小の威厳が隠れるほどに雪が舞う。

全身の雪を払い一小の中へ入ると、団子木が未だに初市気分。

「はやぐ押してけろずーッ」
自販機のボタンは、雪をかぶりながらもあたりに客がいないか目を配る。

「不要不急の用がある人以外は外出を控えてください」と、ニュースがいっている。
確かに人影はまばら。でも一小の石の柵は総出で並んで雪まみれ。


撮影した1月14日は山形にとってたいした雪ではなかった。しかし一夜明け今日15日は一気に積もってしまった。
※1月15日昼、十字屋八階の食堂から撮影。
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