◆[山形市]豊烈神社 初詣(2015平成27年1月1日撮影)

「年の初めがなして網目越しなんだずぅ」
「まだ2015年もわにっだがらだべぇ」
こびりついた雪は凍ったらいいか溶けたらいいか躊躇する気温。

天気は良さそうだが、なんとなくハラハラ舞うものも混じっている山形らしい天気。

ここからは、もう何回写真を撮ったことだろう。
遠景にはビルが乱立しているが、今年もまだかろうじて栄町通りは昭和が残っている。

街はいきなり生まれ変われない。
一旦更地となり、雪を被り地面が鎮まったことを見極めてから新たな街が生まれる。

「仲良ぐしったのがぁ」
「別に仲なんかいいぐないげんと、大人しぐしてるしかないのっだなぁ」
スコップと看板は雪にまみれてくっつきあう。

「正月だていうのになんだが寂しぐないが?」
「ほだなごどない。たまに酒の残ったワンカップば捨てでいぐおじさんいっどれ」
たまには福を捨てていく人がいないものかと思いながら、寒さに凍える。

湿っぽい雪だから街のあちこちに雪はひっつき虫。

「ところてんだが?挽肉だが?」
フェンスはあまりの重力に悲鳴を上げる。

「暖かい手のひらが恋しい・・・」
ハンドルは手のひらに握られてこそ活躍できる。

「ほんとのアイスクリームになてしまたどれはぁ」
「寒くてわがらねぇ。早ぐ夏こねがなぁ」
アイスクリームが寒いというんじゃどうしようもない。

雪の花が咲いたような並木の向こうは東大手門。

「うへっ、首の後ろさ雪入たぁ」
突然の風に、樹木にしがみついていた雪は堪らず吹き飛ばされる。

「去年は誰からももがんねくていがったぁ」
街のモニュメントはよくいたずらされるので、小さな鳥は気が気でない。

「早ぐあべずぅ。ミカン無ぐなるはぁ」
「心配すんな、ミカンなの売るほどあっから」
豊烈神社への初詣は、みかんの初食べでもある。

たまに雲が切れると樹木は一斉にキラキラと輝きだす。

混むほどでもなく、静かでもない。ちょうどいい初詣の場所といえば豊烈神社。

「お願いします。こいずば焼いでけらっしゃい」
去年の嫌だったことと一緒に焼いてもらうお札たち。

新雪をかぶったり溶けたりを繰り返し、おみくじは少しずつ木の枝に同化していく。

「長靴少なぐないが?」
「何ゆてんの。こごは街の真ん中だじぇ」
確かに参道は綺麗に雪かきされているし、山形市は村山地域で一番雪が少ない。

「いづまで見でんのや。行ぐぞ」
子供は鼻を真っ赤にし、冷たい水の様をじーっと見つめる。

ミカンと御神酒と日の丸。
正月の三種の神器が手の中に揃う初詣。

なんといっても滑らないのはワラに決まっている。
落雪も注意しないと危ないが、足下のワラに人々はどれだけ助けられることか。

豊烈神社名物「日の丸ミカン」。
これを目当てに訪れる人も多い?

「なんたっす?」
「ありがとうございますぅ」
ちょっとした小さな会話も、寒い正月にポッと火を灯す。

「どいずいがんべなぁ」
「どれ選んでも人生変なの変わらねがら。」
「人生ばいろいろ選べるんだら、おんちゃんもこだなごとしてねっけなぁ」

小さな竹とんぼは、冷たい雪を振り払うようにプルルと震える。

「あんまり近づくど顔すすけっからな」
煙の来ない場所を選んで、しばらく炎を見つめるのが人の常。

去年は燃えさかりながら空へと消えてゆく。

「ツララの真下って、おっかないずね」
ましてや、あの三つ指でかぶづがれそうだし。

本殿の裏へ回る。人影はない。
身じろぎ一つしないブランコの肌はピリピリにひび割れている。思わずクリームを塗ってあげたくなるようだ。

誰もやってこない本殿裏に、初詣での喧噪だけは流れ込んでくる。

「これが欲しいっけのよねぇ」
嬉しくて雪の上に置いて記念撮影。
「日の丸の左下さ小さく「豊烈神社」てあるのがプレミアムだずねぇ」

人々が雑煮を食べコタツに入っているそのときも、年賀状は雪の中を駆け巡る。
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