◆[山形市]大野目・青野 お盆の真ん中でトンボ舞う(2014平成26年8月13日撮影)

遂に大野目交差点は立体化され、大野目高架橋となった。
荒谷経由天童行きのバスも、新たなルートを通ってゆく。

「飯田・松山・あこや・大野目て別々に立体化するんだごんたら、全部一気に高架橋にならねっけの?」
「んだず。高架橋ば走るたんびに、山あり谷ありの上り坂・下り坂だがら、冬なの結構おかないじぇ」
「ほだごどゆたて、予算てゆうものがあっべず」

青野の山の麓、大樹院に足を運ぶ。
風車が青空に映え、眼下には大野目高架橋や、ヤマダ電機の黄色い建物が小さく見える。

青野公民館の片隅をよっくど見てみる。
「おいバケツさん、ふづりなのボロボロだどれはぁ」
「昭和62年7月20日から働いっだがら、当たり前っだなぁ」
両脇のチリトリとスコップもうんうんと頷いている。

真っ赤な鶏冠(トサカ)を振りかざし、ケイトウの咲く季節になってきた。

サルスベリが招く道。その先を曲がればどんな光景が広がっているのだろう。

「このまま先さ進んで何があるんだべが?」
緑に覆われ息苦しさを覚えるほどの小径を、不安を抱えながら進んでゆく。

「あいや、トンボいだどれ。残暑は厳しいげんと、秋と接してるのっだなねぇ」

「よっくど近づいて見っべ」
警戒して何回か飛び立ち、そしてまた戻ってくる。
やっと、この親爺に悪気は無いと感じたのか、じっくり止まって撮らせてくれる。

あんまり暑いものだから、道沿いの葡萄棚をのぞいて見る。
そこだけが違う空気をまとい、静まりかえっている。

家並みも途切れ、何を撮ったら良いか迷っていると、羽音が近づいては遠ざかる。

「オマエは何者だぁ。勝手に撮んなぁ」
ウルトラマンにでてくる怪獣のような顔をして、里芋の葉っぱが威嚇してくる。

「なして鉄アレイがぶら下がてるんだべ?」
「脚立がひっくり返らねようにがぁ」
鉄アレイは汗を浮かべず、錆を浮かべてじっと第二の人生に耐えている。

青空を透かす羽根。
自然とはよくも、こんな精巧で繊細な羽根を作り出すもんだ。

「入山禁止?この緑の有様ば見だら誰も入山する気にならねず」
首筋の汗をぬぐいながら、緑の圧倒的な力強さに戦意喪失してしまう。

「暑くて体が爆発してしまいそうだはぁ」
転がるボンベははち切れそうな体をもてあまし、草に覆われのたうち回る。

「ほんてんどさ行ってもトンボいっずねぇ」
トンボはすぐそこまでやってきている秋をたぐり寄せるように、先陣切って暑さの中にいるのだろう。

「アバーッ、暑くて呼吸も大変だぁ」
一斗缶は錆びた口をひん曲げて、荒い息を繰り替えす。

「高速道路が出来る前は静かな村だっけのよう」
さっき会ったおばちゃんがいっていた。
高架を飛び去る車たちが巻き起こす風が、葡萄の蔓の先っぽを微かに揺らす。

「ほだな鉄さ止まって、足がやけどするんねがよ」
「オラだは人間ほどヤワんねがら」
背後のビニールシートからの輻射熱にげんなりしているから、トンボへ反駁する気にもなれない。

「何しきたの?せっかぐ来たんだごんたら不動様まで行ってみだらいいべ」
「どれくらいの距離なんだっす?」
「山の中ば何キロが行がんなねべな」
顔に笑顔を作って感謝の意を表し、とてもじゃないが行けないと心の中で呟いてしまう。

青野は町内会がキチッと機能してるんだなと、ホース収納箱が真新しいのに気づいて思う。

線香花火を散らしたようなポツポツは、涼やかな風の通り道。

「折れ線グラフを見て頂いて分かるとおり、たまに下がることはあるものの、全体としては右肩上がりで推移しています」
「何ゆてるんだ。ただのトタンの影だどれ」

深紅の芙蓉が道ばたで容姿を誇示している。
すぐ脇を車が走り去り、芙蓉はびろらびろらと花びらで自分を扇いでみせる。

「山神神社の鳥居にぶら下がっているのは蜘蛛の巣が?」
おそらく電球かなんかの針金なんだろうが、青空を背景にプラプラと蜘蛛の巣と戯れている。

「ほんてん猫撃退に効果があるんだがよ」
「オラだば責めねでけろ。責任感だげ立ってるんだがら」
ペットボトルは青空の白い筋を見上げながら、かまねでけろという意思を全身で示す。

トタンにべったりと影を貼り付ける太陽。
これはシール剥がし剤をもってしても簡単に剥がれない。

筋雲がたなびく青空が広がってきた。
バスケットの輪っかは、そんな雲たちをすくい上げようとでもしているのか。

「うへ、首痛っだい」
見上げれば太陽は目を刺すようにぎらつくし、輪っかは口を開けて笑っている。

「へんてこな遊具だずねぇ」
「この暑いどぎに、こだんどごさ来るおだぐもへんてこだぁ」
遊具に反論されながらフェンスの向こうを見れば、大野目の大型店が立ち並ぶ。

山神神社の床板が歴史の流れを強く感じさせる。
ポタポタ落ちた銀杏の実を、毎年のことと老いた体で受け止めている。
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