◆[山形市]山王 早すぎる夏(2014平成26年5月31日撮影)

「中国から黄砂だが、PM2.5だが来てるらしくて遠がぐが見えね」
天気が良ければ、いや、天気が良く空気が澄んでいれば、
奥羽の山並みも、山形の街並みもすっきり見えたはず。

富神山北麓に位置する山王。
うねうねとくねった山道を県民の森方面から平地に降りてきて、ホッとする場所に広がっている村。

野生化したシャスターデージーが、道ばたでワイワイ言いながら背比べをしている。

「こいなば味があるていうんだべ?」
「舐めでも錆の味しかすねべぇ」
ペプシ看板はコーラがべったり張りついたようになり、農機連の車はクラシックカー。

この辺からいよいよ富神山を登る山道へ入る。
シャスターデージーは富神山の影にならなくて良かった。

「暑っづいがら抱ぎつぐなずぅ」
「んだて退屈なんだものぉ」
どうやらどんなときでも二人は一緒。

アイリスの花が風に揺れる。
しかも風はすぐ目の前を走るトラックの風。
やんだげんともしょうが無い。生えだ場所で生きでいがんなねのっだな。

夏の陽を浴び、力任せにまとわりついた雑草たち。

青いドラム缶の蓋と、赤いツツジ。
揃って早すぎる夏の日差しを反射する。

風車らしきものも動きを止めた。
風が止んで熱気がこもり始める山形盆地。

「この写真はあんまりよっくど見ないでください」
「ありゃ、見つけでしまたがぁ」
蠢く毛虫も生きるのに必死。

この間までの弱々しい緑はどこへ消えた。
濃い緑は暑苦しい大気より力強い。

富神山へ登る最初のヘアピンカーブ。
車は皆減速し、そして排気ガスをお土産に置いてゆく。

「こだいアップにしても恥ずかしぐないのが?」
恥ずかしいどころか誇らしげにベロベロ広がっている。

「うわーっ、見でるだげできつい〜」
どこまで行くのか知らないが、とにかくずーっと上り坂。

「体が干上がってしまうずぁ」
「なにゆてんの。オラだば干上がらせるためにこごさ干さっでるんだじぇ」
ござも毛布も、水音で涼しさを感じながら、体は燃えるように熱い。

「いいぞいいぞー。坂道の先はどだな光景なんだべ」
こんな単純な好奇心が残っている限り、撮影は続けるつもり。

石垣を草花が飾りたて、杉は深い緑で圧倒してくる。

「せっかぐペンキが新しいんだがらよ、邪魔すんなず」
看板が何を言おうと、雑草と呼ばれる草たちに容赦は無い。

「注意!といいながら、なんだが弱腰んねが?」
「なんぼオラだが看板だて、おっかないものはおっかないっだず」
笹の中に隠れて本音を漏らす。

遙か遠くに霞んだ奥羽山脈を眺めながら、緑に囲まれたダラダラの坂を下る。
こんな気持ちいい小径が山形には幾筋もあるんだなぁ。

「まだ、派手に咲いっだずねぇ」
全身から喜びが漲るように、一ミリでも太陽へ近づけるように先を競って咲く。

「ちぇっと悪れげんと、裏側からも撮らせでけろな」
「あたしたちには裏も表もないじぇー」
デージーたちは口々に反論する。

ちょっと時期の遅れた田植えが始まる?
山形の街並みは相変わらず、黄砂とPM2.5で霞んでいる。

「随分遅い田植えだんねがっす?」
「人がいねくてよぅ。遅っでしまたのっだなぁ」
突然のちん入者におじさんは迷惑げ。

「ちゃっちゃど終わすびゃ〜。暑くてわがらね」
五月だというのに30度という気温には、体がついて行けない。

「ちぇっとちぇっと写真撮ってけっからこっち向げど〜」
真剣に仕事をしてたのに、突然おじさんたちに言われ若者は面食らう。

青空の下、機械がうなりを上げる。
若者はテキパキと仕事をこなしてゆく。

おじさんたちは若者の仕事ぶりに安心しきっている。
若者の背中には日差しが熱となって張りついている。

はたらく車を操作する男は格好いい。
真剣なまなざしで田植えする姿は、男(おじさん)が見てもほれぼれする。

「ちぇっとちぇっとこっちゃ来い。有名なカメラマンが撮ってけっど」
有名なカメラマンなのんねんだげんとという言葉を飲み込み、とりあえずキリリと結ばれたタオルを撮ってみる。

ワールドカップ近し。
どこかこの青年、大久保嘉人に似てないか?
野性的な魅力を備えつつ、山形人らしい引っ込み思案そうな所もいい。
今回の撮影は若者にとってサプライズだったかも知れない。
私はこの若者が気に入った。
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