◆[山形市]第一回 山形まるごとマラソン(2013平成25年10月6日撮影)

天気予報では曇りだったのに、この青空はなんだ!
はじめての山形市でのマラソン大会へ、青空もエールを送っているようだ。

「マラソン見るのど芋煮食うのどっちいい?」
「芋煮に決まてるべした」
スポーツの秋が食欲の秋を超えることは出来ない?

「あいや、皆鍋たがてぇ」
河川敷の満杯の駐車場を見て、呆れるやら羨ましいやら。

「今何時だぁ?」
「ずげ始まっべぇ」
9時スタートのマラソン大会を待ちわびる人々の顔も明るい。

「うおー、来た来た〜!」
山形市で初めての本格的なハーフマラソンに、人々の目は釘付け。

太陽が顔を出しているおかげで、ランナーの影も主に遅れまいと踊るように地面を駆け抜ける。

「しっかしびっくりしたぁ。んだて千歳橋が揺れるんだじぇ。」
いまだかつて橋が揺れるほどに人々が駆け抜けたことは無い。

「あいや何事だべ。お伊勢参りが?」
山形人はこんなに多くの人を見たことがないものだから、度肝を抜かれている。

ほんとは、たかがマラソンと斜に構えてみていた自分。
この圧巻に山形人は目を見張り、日頃のゆったりした時間の流れはなんだったんだべと自問自答する。

鱗雲に近づこうと、コスモスはか細い首を一生懸命伸ばしている。

「気持ちいいくて眠たぐなるぅ」
河川敷のあちこちから芋煮の煙がたなびき、街中ではランナーが汗を流しているというのに。

「スタートすっどごは見だし、今度は場所変えでちがうどごで見っべ」
ランナーが街中を走っている間、千歳橋から二口橋へ先回りする。

「なえだて街中騒々しいど思ったら、今日はマラソンだてがぁ」
箒は退屈げにプラプラ揺れ、おじさんはまぶしげに馬見ヶ崎の上流を望む。

「あど何分で来るんだぁ?」
「まだ大丈夫だぁ」
20キロの道のりも、早いランナーはたったの一時間で走破する。
ここ残り2キロ地点の泉町へも間もなく選手たちが押し寄せる。

東小は学校を挙げて応援している。
おそらく47都道府県分の応援ポスターが貼ってあるのだろう。

「ほれ何しったの。選手だ来っじゃあ」
「んだてコスモス綺麗なんだも」
土手のコスモスを楽しみながら、マラソンの応援なて最高の日曜日っだなねぇ。

ゴールが近い二口橋。
選手は渾身の力で走り抜き、人々はあたたかい拍手を送る。

「いやぁ、天気いいくていがったねぇ」
「んだず、せっかぐ県外からもいっぱい人来てけだんだがらよぅ」
人々はシャッターを押しながら、拍手しながら天気に恵まれたことを感謝する。

麦わら帽子の影もくっきりと映る晴天。
ランナーにとってはちょっと暑いかも知れないが、もう少しだ頑張れぇ。

秋の山形路に集まったランナーへ、三々五々集まった人々は拍手を惜しまない。

「普通の日曜なら静がなもんだげんとねぇ」
「普通の日曜んねんだべず今日は」
次々駆け抜けるランナーに驚きを隠さないコスモスたち。

橋の上で人々はランナーを応援し、橋の下では芋煮の仲間が集まるのを待っている。

山形路を颯爽と駆け抜けるランナーたちは、山形の大気を大いに吸って山形の秋を大いに満喫して欲しい。
え?走ってる途中でそんな余裕が無い?そりゃそうだ。

日頃マラソンに縁の無い人々も、家の中から飛び出して手を振り拍手している。
ランナーたちはそんな沿道の人々を目の端に入れながらゴールを目指す。

必死に走るランナーを、地面にしゃがんで子供とゆっくり応援するのもいい。
そのほのぼのとした光景は、まるで今日の山形のように温かい。
スタッフはそれどころじゃないだろうが。

「やんばいな人の数だんねがぁ?」
「何人ぐらい走たもんだべねぇ」
土手の温もりを感じながら、背中にも太陽の熱を感じ、ランナーの意気込みも感じる。

「おじさんはこういうのに弱いんだずぅ。
子供だは何気なくポスターば掲げでいるんだべげんと、がんばれ岩手県どが描いであっど涙腺が緩むのよぅ」
必死に走るランナー。心底応援する子供たち。涙腺が緩んでしまう自分。

「バンガレー!、間違がた、ガンバレー!」
タッチの場面で遂に涙腺は決壊した。

「ほれガンバレず、ほれー!」
おばちゃんたちは年甲斐もなく(失礼)はしゃいで、手が痛くなるほど拍手する。

全国から集まったランナーが泉町を駆け抜ける。
泉町が輝いて見える一日だった。

色とりどりのウェアが街を彩る。
ゴールのスポーツセンターまであとわずか。

ランナーが汗を流している頃、やっぱり鍋から湯気が立ち上っていた河川敷。
今日ばかりはランナーの応援派と、いも煮会派に山形人が分かれてしまった。
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