◆[山形市]文翔館・市役所前 第二回さくらんぼ祭り(2013平成25年6月22日撮影)

「うわー、一緒に撮ってもらてうれしー!」
「いがったなぁ」
「ところであのキャラ何?」
モンテはもっと強くならないと、子供まで浸透しない。

「そろそろ時間だべはぁ、いろいろ準備さんなねぇ」
伝統芸能の衣装を身にまとい、太鼓担いで本番への気持ちを高める。

「待ってんのもしんどいずねぇ、気持ぢいいくて眠たぐなるはぁ」
「ほだごどゆて、ほんとは緊張してなにしたらいいがわがんねくてだんだべぇ」

大蔵村の合海田植踊りが始まった。
さっきまでのゆるっとした空気は消え去り、体中の筋肉に緊張が走る。

なにやらよく分からない道具を使い、真剣なまなざしを放つ。

合海田植踊り保存会の方々はイコール消防団であり、
要するに消防団へ入れば田植え踊りも覚えなくてはならないということらしい。

滑稽な動きで観衆の注目を浴びる。
遠巻きにする観衆は日差しを気にしつつ、ほおの筋肉を緩めている。

「この選手どさいだの?」
「こごはモンテの会場んねがら」
目の前の踊りとカードを見比べ、子供は変だなぁと首をかしげる。

山形市役所前のの千年和鐘があっという間に子供たちの遊具と変わる。

楽天が来た!でも主力は等身大看板のみ。
そんなことにおかまいなく子供たちはバッティングに興じる。

祭りの喧噪は文翔館の正面へまともに流れ込んでくる。

誘蛾灯へ引きつけられる蛾のようにして最前列へ陣取ってしまった。
ふと脇を見ると、前列へ並んでいるのはカメラ片手の親父だけかい。

「やっぱり近ぐで見んのはいいもんだずねぇ。いやぁみなめんごいごどぉ」
この中の二人は山形出身らしい。「なんだてぇ、仙台で頑張てけろねぇ」

文翔館前の広場にパッと日が差してきた。
子供たちの躍動感がより立体的に目の前へ飛び出してくる。

「やっぱり笑顔ずぁいいずねぇ」
「んだぁ、子供だの笑顔ば見でっど、オラだも自然と笑顔になてしまうもなぁ」
子供たちから溢れる笑顔のおこぼれをいただくパフォーマンスなんだな。

「たまには人がたがてんのば上から見んのもいいずね」
「ほだな上から目線だべず」
何はともあれ文翔館の二階からベランダへ出ると、山形の中心にいるという気分に浸れるのは確か。

東北ゴールデンエンジェルスがパフォーマンスを繰り広げている。
さっきの自分のように、みんな目が釘付けだ。

「通りの先は湯気が立ってだみだいだじゃぁ」
「何が旨いものでも売ってるんだべぇ」
「人の頭しか見えねぇ」
地面が見えないほどに通りは埋め尽くされる。

「文翔館の時計台はよっす。正確に動いでんのよっす」
「電気で動いでんのんねべっす?」
「毎回時計屋さんがねじ巻ぐんだっす」
七日町通りを北上した時には、市民はみんなあの時計台で時間を確かめる習性がついている。

外の空気が開けた窓から微かに侵入する。
ほとんど空気の動かない踊り場で、箒だけが体を震わせる。

「みんなから擦らっでテロテロなたはぁ」
山形の歴史を染みこませた手すりは、これからもいろんな人にたづがれて擦られる。

窓枠に掛かった影が少しずつ動いてゆく。
前庭の喧噪から隔絶されたように、中庭は静まりかえっている。

「どれ汗も引いだし、まだ通りさ出でみっかぁ」
溢れかえる人並みに怖じ気づく自分を鼓舞して正門を出る。

「市役所の前さ人だがりだりゃ、ダンスしったのがぁ」
躍動するダンスと人々を、駐車場に貼り付けられたモンテの選手たちも脇から覗いている。

「山形の人て引っ込み思案てウソだずね」
ステージに向かい、観客たちも併せて踊る。

「山形の高校生て元気がないなてウソだずね」
共鳴するものがあれば人はついていくし、自然に体が動き出す。

雲間からカッと日が照りつける。
黒い影が踊りながらステージに浮き上がる。

若いエネルギーがビルの谷間から空へ立ち上る。
垂れ込めていた雲が雲散霧消していくようだ。

「んだて体が勝手に動くんだも」
ダンスには人の体に魔法を掛ける力があるらしい。
TOP