◆[山形市]小白川町二・三・四丁目 開花前夜(2013平成25年4月6日撮影)

「鯉のぼり、泳いっだじゃあ」
「ちっちゃくて、まだ稚魚みだいだどれ」
人々の注目を集め、鯉のぼりは早く大人になりたいと、口をパクパクさせる。

「お、欄干さ桜のネオンが飾らっでだじゃあ」
あともうちょっと。ほんのちょっとで桜が咲く山形。

「どっちゃ行ったらいいが困ってだのが?」
「春さ向かえばいいんだべした」
ジャバへ行く橋の上で日時計が日を浴びている。
日時計に登ったテントウムシは刻々と変わる時間に焦りつつ、進路に困っているようだ。

枯れ草は床屋へ行く前の伸びきった髪の毛のようにボサボサだ。
やっぱり桜が咲きライトアップされないと、本気で春を迎える気になれないのか。

八小前の通りも桜はまだだ。
粉っぽい大気へいかつい体をさらしたまま、桜は咲く瞬間をカウントダウンしている。

「だれだず、ほだごどすんの」
「オラだでないごどは確かだな」
タバコと携帯灰皿は、一服もせず話し込む。

「こいずでも食て、ちぇっと大人しぐしてろな」
「うん、わがた」
言ったそばからチョロチョロしだす。

「ったぐ、どさ行ったんだずねぇ」
「子どもば探してんのに、なしてバケツば持てきてしまたんだべ」
紅梅は素知らぬふりをしながら、子どもの隠れ場所を教えようか迷い微かに揺れる。 

「でへへへ、そろそろ出でいぐが・・・」
母親を困らせるのは子どもの大事な仕事。

「並べ並べぇ、空ば最初に飛ぶのはオレなんだがらぁ」
ボールたちは早く大空を飛びたいと心がはやる。

「なんだがケッツがムズムズすね?」
「うん、後ろでどごがのおんちゃんがカメラで狙ってだがらだがもすんね」
早く練習が終わらないかという気持ちをぐっと心の中に押し隠して、少年たちは甲子園を夢見ている?

流れるような曲線の彫刻に、赤い車は目が釘付け。
天満神社には伝統工芸と、現代の先進技術が同居する。

「ふむふむ、なるほど」
「なんて書がったの?」
「ほだなごど教しぇらんねぇ」
どう見ても字は書いてないようだが・・・

茂みの中で巨大なカエルがクルクルと目玉を動かし、
身じろぎもせず獲物を狙っている。
これだけ大きなカエルなら、さぞ凄いジャンプをするのだろう。いや待て、重すぎて動くのもキツそうだ。

天満神社の境内には薄日が差し込み、柔らかな日だまりがクッションのように弾んでいる。

「宝沢まで行ぐなて、ずっと上り坂なんだじぇ」
「帰りはずっと下り坂だべ」
要するに笹谷街道は坂だらけということだ。

「七日町まで歩ぐのぉ?」
「昔の人は、どさ行ぐったて歩いだの」
「僕は今の人だも」
会話は上を走る国道13号の騒音にかき消される。

「まだ、邪魔入たニャー」
「ちぇっと撮ったらすぐ退散すっから」
にゃんこは露骨に警戒し、二匹の間ば邪魔すんなと目がはっきりいっている。

「なんにもこだんどごで、おがっごどないべず」
タイヤは迷惑げだが、ふきのとうは気持ち良さそうに空を向くだけ。

まだ色彩のない公園内へ、春一番に彩りを添えるサンシュユの花。

「影が曲がてるだげで、性格が曲がてるわげんねがら」
滑り台の下へ潜り込んで、滑り台の言い訳を聞く。

「ほっだい電信柱さくっついでぇ」
「んだて暖かいんだもの」
新芽は、まだまだあどけない声で気持ちを伝えてくる。

「恥ずかしいがら、こだな格好ば撮らねでけろ」
「一冬越えでご苦労様ど思て撮ったんだぁ」
干からびた野菜は、早春の陽を浴びながら去りどきを考えている。

「なして家の中ですねの?」
「んだて外のほうが暖かくて気持ちいいんだも」
優等生の答えだが、本音は親にグチュグチュ言われないからだったりして。

「こだんどさオレば転ばしてサッカーがよっ」
自転車は表面上はごしゃぎながら、実は日に照らされて暖まった地面も捨てがたいと密かに思う。

「洗てけっか?」
「ありがたいげんと、やっぱりいいはぁ」
綺麗な電信柱はバケツの中を覗き込んで、
タワシの申し出を婉曲に断る。

「なんだが、いろんな臭いが混ざり合っていねが?」
「板の上ば見でみろ。んだどわがっから」
春の匂いを楽しんでいた雑草たちは、板の下で愚痴をいう。

雪に覆われていた畑は、冬の去り際を察知した。
その途端、急いで身支度をした草花が、我先にと顔を出し始める。

「そろそろ去った方がいいのんね?」
吹き出した新芽たちに促されても、カチャカチャに乾いた枯れ葉は決心が付きかねている。

山形五堰の一つ「御殿堰」は、七日町方面へ白い帯を細長く伸ばして流れてゆく。

「枝同士でイチャイチャして手ば握り合ってだぁ」
「いいっだず、ほいにして熱ぐなて花開ぐのっだな」
開いた途端ライトアップされ、いきなりスターダムにのし上がる馬見ヶ崎の桜たち。
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