◆[山形市]小白川町五丁目・馬見ヶ崎川 30度超えの洗礼(2011平成23年8月6日撮影)


ヤマザワに車を止めて、あけぼの公園まで歩いてきた。
すでに汗が体中から滲み出て、木陰から抜け出す決断が鈍ってしまう。

「街の方さ下て行ぐのはいいのよ。んでも帰りは汗だぐだぐだはぁ」
街全体が西側に傾斜している扇状地の宿命か。

涼しげな薄紫を辺りに放ち、花びらの周りだけ気温が2〜3度低いように感じてしまう紫君子蘭。

「随分詰め込んでっずねぇ」
ポストは暑さを堪えながら、車の腹の中を探る。

「水に注意て、なんだが水が悪者みだいだずねぇ」
「んだんだぁ、オラだも人間も水なしでは生ぎらんねべ」
干上がりかけたアジサイが首を伸ばして看板を糾弾する。

ポタポタ落ちた柿の実を、
暑さから守ってあげたいと、葉っぱの影が被さろうとする。

「人間は日差しで真っ黒ぐなっべげんと、
オラだはすっぱげんのよ」
標識は文字を判読するのも難しいほど夏バテの表情。

「うおおお〜、日差し最高!夏よウエルカムゥ」
「暑くて元気いいのはオマエだだげだ」
はしゃぎ回る葉っぱから目を射るように日差しがこぼれる。

「赤い車に黄色い向日葵って似合うど思わね?」
向日葵は勝手に相思相愛と決め込んでいる。

夏になると至る所で一斉に咲き誇り、
太陽へ向かって笑顔を振りまくムクゲたち。

「邪魔邪魔〜。オラだが目立たんなね季節だがら」
朝顔は電信柱へ一斉に抗議する。
「仕事だものしょうがないべしたぁ」
電信柱は身じろぎもせず、愚直に突っ立っている。

「あの朝顔の葉っぱの中さ逃げ込むだい」
火照った体で恨めしげに眺める真っ黒なバイク。

「雲は湧き、光溢れてぇ♪」
まさに夏。山形も34度となり、甲子園も始まった。

こんな涼やかな公園があるとは知らなかった。
葉擦れの音に混じって蔵王インター方面から車の音が微かに聞こえてくる。

「これはアブラゼミだべが、ミンミンゼミだべが」
引っ張って手に取ってみようとしたが、蝉の足が葉っぱに食い込んで取れない。
それにしても、今年はどこへ行ってもミンミンゼミの声しか聞こえないのは何故?

ここを流れる水路は、やがて御殿堰・八ヶ郷堰・宮町堰・双月堰と分かれて市内北部を流れていくらしい。
ここが水路たちの長旅の原点であり、始発駅でもある訳だな。

ちょっと休もうかとベンチに目を移す。
先客が羽を休めこちらをジーッと見つめている。

ちょっと一歩踏み出しただけで、蜘蛛の子を散らすように逃げ去る魚影。
暑さも忘れて、しばし目で追いかけてみる。

公園から抜け出て、再び全身に容赦なく陽を浴びる。
「オマエだ、なんともないのがこの暑さ」
ブオンブオンと風を切るようになびく蔓に呆れてしまう。

「とにかぐ日に焼げる訳にはいがねがら」
それでも馬見ヶ崎の流れをを見てみたいのが山形人の人情。
霞城セントラルがあんなに低く見えるのだから、きっとこの辺は標高200メートル近くあるに違いない。

すぐ左脇を車が走っているのに、その音もかき消されている。
耳を聾するばかりの水しぶきの音が、愛宕山に跳ね返り青空へ立ち上る。

「どれ、何が見えんべがなぁ」
堤防を乗り越えるときに手を差し出してくれたおじさんは、無心になって川の流れを見入っている。

とにかく河原沿いは昆虫天国。
突然現れたスイッチョが、
あっという間に足元から草藪へ消えていった。

「オマエ虫が好かねえヤツだな。どっから来たんだ?」
「別に虫に好かれなくてもいいげんと・・・」
生活の邪魔するなと睨んでくるトンボ。
ほんの数分堤防沿いを歩くだけで、
いろんな生き物がわんさか見られる馬見ヶ崎川。

青空に背を向け、目を皿のようにして水底を探る青年に出くわす。
空はどこまでも青く、馬見ヶ崎の流れは身を切るように冷たい。

「そろそろ上がて来いはぁ!」
叫んでも水しぶきが覆い被さるように邪魔して聞こえない。

「こっちさいだぞぅ」
背中や肩を太陽に炙られながら、友人が水底の魚影を探す。

「この辺さは何いんのや?」
「ハヤだっす。逃げ足早くて簡単にはしぇめらんねげんとな」
声の向こうで雲がもくもくと湧き上がる。

「んだらおんちゃんくたびっで帰っからは、最後に何がポーズ決めでけろ」
これはクラーク博士?いや世界一速い男ウサイン・ボルトか。

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